スーパーの精肉コーナーでたまに見かけると、即買いする豚軟骨。
これが最高に美味い。
臓物とか軟骨とかちょっと怪しげな肉は茹でこぼしてアクを出しておけばokかと。
それからフライパンで焼いて
酒、みりん、醤油という和食の基本の味付け
プラス生姜と、さっぱりした感じにしたいので酢もドバッと入れて煮込んで参ります。
落とし蓋代わりのアルミホイルと鍋蓋をして数十分。手っ取り早く圧力鍋を使えばいいのかも知れないが、煮込むという過程が好きなので、じっくり煮込んで軟骨を好みの硬さに仕上げる。
出来上がりが楽しみ。煮込んでいる間、いつからこういう怪しげな肉が好きになったのか考えた。
20歳前後の大学生。東京の下町新小岩の駅から徒歩30分築30年というボロアパートに住んでた頃だ。
新小岩のルミエール商店街を抜けたところに持ち帰り専門の惣菜屋があった。この店は店頭で炭火焼きをしており、いつも甘いタレが焦げるいい匂いを辺りにふりまいていた。煙草咥えてしかめっつらのおじさんが炭火焼き、おじさん以上にしかめっつらのおばさんが接客担当。若かりし私は、このおっかなそうな人たちに「おめえみてえなガキに売れるもんはねえ!」とでも言われると思い敬遠していたのだが、部活とバイトで疲れ果てたある日、自炊するのも面倒だし、コンビニ飯も飽きたし、外食する金はないし、で、ついにこの店で惣菜を買う決心をしたのであった。
1パック8本入り手羽先照り焼き250円を買った。
やはり無愛想極まりないおばさんの接客だった。
温かいまま食いたかったので、アパートには帰らず近くの小松川親水公園のベンチに座り、手羽先に齧り付く。
あまりの美味さに昏倒しそうになった。母親の手料理から離れてしばらく。自炊のまずい飯やコンビニ飯ばかりだったからか、久しぶりの手料理っぽいものにえらく感動したのを覚えている。
それからしばらくこの店のファンになり、手羽先、軟骨、臓物の煮込みやら安惣菜を求めて通った。3倍くらいの値段の鳥照り焼きを買った事もあったが、手羽先、軟骨、臓物煮込みの圧勝だった。
ここで買うこと5度目くらいだったか、おばさんがいつもの眉間に皺をよせた無愛想な表情のまま「いつもありがとね」と言った。これ一回こっきりで、あとはいつもの値段しか言わない安定した無愛想だったが、なんだか妙に嬉しかった記憶がある。
さてと、豚軟骨が完成した。
甘じょっぽくて、コリコリして、もう止まらん。
手羽先やら軟骨やら臓物やら怪しげな肉を調理する場合はいつも、今はなきこの店の味を目指す。結構近づけている気がする。