青年K 大学受験に失敗し浪人決定。
若かりしKはこの世の終わりかのように落ち込み、また一年間苦しい受験勉強の日々になる事を呪った。
しかしある時突然、途方もない目標を掲げ行動を開始する。
予備校。相談室。
チューター(予備校の助言者)。
「この前の模試、偏差値は43ですね。現役の時に勉強はやってましたか?」
「いえ、勉強ではなく、スーパーファミコンをやってました!」
「なるほど。で、志望校の偏差値ご存知ですか?」
「偏差値70であります!」
「はっきり言いますが、1年では無理です。志望校を変えましょう。」
「いや、拙者はインディージョーンズみたいな考古学者になって、ムチもって洞窟を探検すると決めたのであります!そのためには、この大学しかダメなのです!」
「………。」
「ふふふ…どうやら本気のようだな。いいだろう協力するぜ。
ちょっとキツイやり方だがな。」
「よく聞け小僧!
予備校の授業には出るな!
しばらく自習室で志望校の赤本過去10年分を新しい年から解答を見ながら解け!
どうせ分からねえんだから考えないで、いきなり解答からだ!
国語、英語、世界史、各科目2冊、解説が詳しく書いてある分厚い問題集を買って、何度も何度も繰り返し解け!
あれこれ手を出さず2冊だけで充分だ!
そして分からなかったら、考えずにすぐに答えを見る癖をつけろ!
お前に考える時間などないのを忘れるな!」
「イ、イエッサー!!」
青年Kはスーパーファミコンを封印し、チューターが言う通りに勉強法を変えた。
寝てる時以外、移動中、食事、風呂、トイレ、全て勉強に当てた。
一年後、世界の歴史ストーリーがほぼ脳内にインプットされ、英字新聞を日本語変換することなく読めるようになった頃、青年Kは骨と皮だけの姿となり、湯船に入ると気絶するようになっていた。
数十年後、青年Kはムチもって洞窟で探検していなかった。
ではこの時の努力は無駄だったのか。
いや、この一年は彼にとって最も重要な一年だった。
東洋医学家を目指す彼にとって、勉強スタイルは今こそ役に立っている。
そして何より、やれば出来るじゃん!と心から思えたのが一番の糧である。
彼は今、鍼灸をもって色々な人をみている。
今時期は受験生も多い。
上手くいった方も、もう一度チャレンジの方もいる。
懐かしいなと思い出しながら、頑張ってよ〜鍼を打つ。