「先生のところの子とうちのタケシは仲がいいねぇ。」
そうだな。
「ボリボリ。大根うめぇ。
タケシはあたいに似て相撲が合ってると思うんだ。だから3歳になった今、高砂部屋に入れようと思ってる。タケシ自身はアイドル歌手に憧れてるみたいだけど、あたいは力士になって欲しい。先生の子も格闘タイプだろ?一緒にどうだい?」
……。
いや、3歳の子供に激しい運動はまだ早いかも知れん。
理由は二つある。
一つはこれだ。
「スキャモンの発育曲線」
大人な身体を100として神経、生殖系などの発育を記したグラフだ。
神経系の発育は生まれてすぐに急上昇しているのが分かるだろう。
5〜6歳には大人の80パーセント近くまで発育している。脳や神経はごく早期に発育するのだ。
この時期は特殊な動きに限定されるスポーツよりも、外遊びなどで様々な刺激を受けた方がいい。
外で自由気ままに身体を使って遊ぶのがいいのだ。
就学前は五感を研ぎ澄ます最後のチャンスとも言われている。
スポーツをしたいなら曲線の100パーセント間近の小学校中学年くらいからでも良いと思う。
もう一つはこれだ。
股関節の緩さ。
小さな子供は股関節がまだ固まっていない。
股関節は無理ない遊びでの正しい圧が加わって成長していくものなのだ。
無理な運動は、不自然な圧となって股関節の成長の妨げとなる。
「なるほどね。じゃあ三年生になったら高砂部屋に入れるわ。」
数年後……
「ボリボリ。大根うめぇ。」
相撲の道は諦めたのか?
「タケシは相撲よりアイドル歌手がいいってさ。ほらごらんよ。みんな奇声をあげて喜んでる。」
うむ。好きを伸ばしてあげるのが一番かも知れんな。