この物語はフィクションである。
神出鬼没の鍼灸師「K」をご存知だろうか。
群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、
鍼灸師のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼の武器…
そんな彼と多くのクライアントとのドラマチックな物語である。
テレビで鍼灸の特集が放映されたらしい。
俺の治療院にも何件か問い合わせがあった。
いい機会だ。
国民の皆さんにもっと知ってもらえる。
80代くらいのお爺さんがやって来た。
奥様の腰痛に関する相談だった。
何年も色々な病院に行っているが改善されない。年齢のせいみたいだから諦めらかかっていたところ、テレビで鍼灸をやっていて、どうんなものかと思った。との事だ。
レントゲンでは骨が潰れて曲がっているからどうにもならないと。
病院を否定するつもりはさらさらないが、全く違う見方をして症状が軽快する場合もあるのだ。
さて、みせて頂きましょう。
前後 前 …胃経 表裏の脾 縮んでいる。
後 …膀胱経 表裏の腎 伸びている。
左右 右に傾いている。
左 …胆経 表裏の肝 伸びている。
右 …胆経 表裏の肝 縮んでいる。
聞くと食欲不振や食べ物が落ちていかないなどの症状もあるようだ。
気、血、津液がしっかり巡れば、だいたいの症状は自然治癒力で快方に向かう。
このお方は左胆経を縮ませ、後膀胱経を縮ませると良いだろう。
まずはそれからだ。
腰が楽になり、消化器官も少し働くようにはず。
おおおおおおおおぁっ!
立ってみてください。
「あ〜楽です!」
ご主人がやって来た。
「母さん、終わったかい?楽になったようで良かったねぇ」
ご主人が靴下を履かせるのが日課のようだ。
不謹慎だが何とも美しく素敵なご夫婦だと思った。
もうご自分で靴下履けると思いますよ。ちょっとご自分でやってみましょうか。
「え?ありゃ、ほんとだ足上がるわ。ありゃあ〜。」
「母さん、良かったなぁ〜。あひゃひゃひゃひゃ!」
なんだか暖かい気持ちになった。
ご夫婦で美味しくご飯が食べられるようになるといいな。
これが俺流SDGs。医療資源は底が見えつつあるのかも知れない。http://kawashima-naoya-1203346.hatenablog.com/entry/2018/06/20/161929
お困りなら鍼灸も選択肢に入れて頂きたい。
それにしても優しいご主人と可愛らしい奥様だったなあ。
よし、帰ったら俺もあのご主人のように母ちゃんの靴下履かせよう。
ぐへへへ、母ちゃん、靴下履かせてやる。
「何すんのよ!変態!」
ぐはっ!
——完——