【バイオレンス治療院の施術録 vol.2】
41歳男性
主訴 足が痛くてつけない
週末に家族旅行がある。このままでは一人でお留守番になってしまう。何とかしてほしい。
みてみると凄い腫れだ。
病院での検査では骨折はないらしい。
レントゲンに写りにくい骨折もあるので、念の為徒手検査を行った。
足根骨あたりの限局性圧痛(+)
軸圧痛(+)
軋轢(あつれき)音(−)
異常可動性(−)
微妙である。
判断するのに問診も大事だ。
男性は恥ずかしそうに語り始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある会合。
神社の境内での焼肉後に、ビールを冷やしていた板氷を子供達が割って遊んでいた。
なかなか割れない大きな塊があった。
「うぃ〜、ヒック。どうれ、俺にもやらせろ。」
ホロ酔い気分の男性はその大きな塊を宙に放り投げた。
「こんなもの、俺っちの蹴りで一撃で破壊してやるわ。でへへ…おらーっ!!」
ゴキャッ。
一撃で破壊されたのは男性の足だった。
爽やかな風が吹く真夏の神社の境内に、男性の悲壮な叫びがこだました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど、発生機序を考えると重度の打撲、挫傷、捻挫がミックスされているようだ。
パッと治るものと、時間がかかるものがある。
捻じれをとるとパッと治るもの。
修復されるまで時間がかかるもの。
この男性の場合は時間がかかるものだ。
組織自体が破壊されているので、その修復に時間がかかる。
やれるだけの処置はした。
症状は軽減した。何とか家族旅行に間に合う事を祈りたい。